レーザックスは1972年に設立された、愛知県知多市に本社を構える日本のレーザ加工機器メーカーです。
当初は、プラスチックや金属の射出成形用の機器を開発・製造していましたが、その後、レーザ加工に注力するようになりました。
1980年代には、レーザ溶接機、レーザ切断機、レーザ加工システムなどを開発・製造し販売、特にレーザ加工部門は、国内シェアトップクラスの受諾加工事業として知られています。
近年では、ファイバーレーザを採用した製品の開発・販売にも注力しており、国内外のさまざまな業界で、高品質なレーザ加工機器を提供しています。
レーザックス製品の基本情報
製品ラインナップ
ぜんぶで三機種あり、標準機として、パルスモードの『FH-300』『FH-450』、t1までのアルミ溶接が可能なシングルモードの『FH-500+』があります。
注意すべき点は、他社のファイバーレーザ溶接機は1500W機が主力機である中、レーザックスは、最大500Wと低出力である点です。
t1以下の精密板金加工市場にターゲットを絞り、営業展開しているものと考えられます。
そのため、TIG溶接の代替としての選択肢に入れると、接合強度が思った以上にないという結果に陥るので注意が必要です。
営業体制
デモを希望する企業が、愛知県知多市の本社もしくは神奈川県横浜市のテクニカルセンターに来社するのが基本となります。
条件さえ合致すれば、出張デモしてくれる体制も整えています。
サポート体制
安心して長く使用してもらえるよう、積極的に年次点検を実施している点は、他社と大きな違いになります。
長期利用しているとズレることがあるレーザの出力や焦点の確認をしています。
修理拠点は、愛知県知立市・神奈川県横浜市にあり、最善を尽くして対応することで定評があります。
レーザックス製品の特長
①パルス発振のレーザ発振器を搭載していることから、薄板の溶接が得意
主力機種は、パルス発振のレーザ発振器を搭載しています。
パルス発振は、非常に短いパルス幅でレーザービームを発生させることを意味します。
これにより、t1以下の薄板や微細な部品の溶接に適しています。
短いパルス幅は熱影響ゾーンを最小限に抑え、歪みを抑え、高精度な制御が可能になります。
②ワブリング機能を搭載したトーチを採用し、t1までのアルミの溶接が可能
ワブリング機能を搭載したトーチを採用しています。
ワブリングは、トーチの先端のレーザビームを制御することで、溶接プールを広げる効果があります。
この機能により、アルミニウムなどの低融点材料において、1mmまでの薄板の溶接が可能です。
ワブリングによる均等な熱分布と溶け込みにより、強度や美観が求められるアルミの溶接において高品質な仕上がりを実現可能です。
③安心の国内生産で安心のサポート体制を構築
国内生産により、品質管理が徹底され、高い信頼性が確保されています。
また、国内での製造・販売を行っているため、サポート体制も充実しており、お客様の問い合わせやトラブルに対して、迅速かつ的確な対応が期待できます。
安心して溶接機を使用し、シームレスな作業を行うことができます。
レーザックス製品の注意点
①マルチモードとシングルモードの混在
レーザックスのシングルモードの新機種は、500Wの一機種に留まり、旧機種二種はマルチモードになります。マルチモードとシングルモードは、溶接ワークによって仕上りに大きな差が発生します。
マルチモードが得意とする素材は主に1~3mm程度の鉄になります。
これらの特定の素材に限り、その特性がいかんなく発揮可能です。溶接で必要なものは、美観、強度、品質になります。
- 美観は、表面上の仕上りの綺麗さになります。→鏡面ステンレスやアルミ、銅など反射率が高い素材は、薄板でも表面の仕上りが著しく悪化します。
- 強度は、溶け込み深さになります。→ワイヤ供給装置付きのファイバーレーザ溶接機全般に言えますが、母材の溶け込み深さが甘くなる傾向にあります。
- 品質は、ブローホールなどの気孔欠陥が無いことになります。→鏡面ステンレスやアルミ、銅など反射率が高い素材は、表面のみならず溶接内部にも発生しやすいです。
冷却機構の構造は他社と比べ良好な冷却構造であるがゆえに、すべての機種は空冷タイプとなり筐体の小型化にも繋がっています。
②トーチは2種類あるが、選択はできない。
パルスモード用レーザは、安定感のあるストレート型トーチを採用。
シングルモード用レーザは、ワブリング機能を搭載したL型トーチになります。
③コントローラーは素手で使用する必要がある
溶接作業では、手袋をしての作業が一般的になりますが、本製品のパワー調整や各種設定はすべてパナソニック製のタッチパネルを利用する必要があります。
タッチパネルがスマホ大サイズであり、手袋をしての作業は困難を極めます。
クリーン環境下で精密溶接をするため素手で作業するのであれば操作性は問題にはなりませんが、TIG溶接工がレーザを併用することを想定した場合、作業性の点で大きなハンデになる可能性があります。
まとめ
レーザックス製のハンドレーザ溶接機は、箔を含む精密板金業界に特化しており、MAX出力が500Wと小型の製品が主力になります。
ワブリング機構も備えており、ハンドでの溶接性については安定感があります。
国内自社製造企業の中では、筐体がシャープで繊細な点も技術者のデザインへのこだわりが色濃く表現されています。
一方で、トーチの操作性やコントローラの操作性は、流通量が少ないゆえか顧客ニーズから若干ズレが発生しているように見受けられます。
そのため、購入前には自社のニーズや作業環境に合わせて十分な検討が必要です。また、購入後にも適切なメンテナンスや操作マニュアルに従った操作が必要です。