メーカー名本社
出張デモ
製造国製品ラインナップ
(最大出力別)
ビーム形状モード冷却方式
WEL-KEN東京
日本300W
500W
1000W
ワブリングシングルチラー内蔵
ノースヒルズ東京/大阪
日本500W
1000W
1500W
スイングシングルチラー内蔵
アマダ神奈川
中国1500Wスイング空冷外部
レーザックス愛知
日本500W
3000W(パルス)
4500W(パルス)
ワブリングパルス空冷外部
エイム東京
日本600W
800W
1000W
1500W✕二種類
4000W(パルス)
センター/リングシングル/パルスチラー内蔵/空冷外部
日本ウエルディング東京
日本1000W
4500W(パルス)
変調パルスチラー外部
郡協製作所群馬
日本500W
1000W
1500W
スイングシングルチラー内蔵
澁谷工業石川
日本500W
1000W
1500W
スイングシングルチラー外部
光響京都
中国1000W
1500W
スイング空冷外部
PENTA LASE神奈川
中国500W
1000W
1500W

2000W
サークルマルチチラー内蔵/空冷外部
PHYSICAL PHOTON千葉
中国1000W
1500W

2000W
チラー内蔵

コストパフォーマンス

ハンド型のレーザ溶接機は20年ほど前から実用化されていましたが、それは精密板金業界に限られてきました。大きな変革があったのは、ここ2~3年になります。

その理由はファイバーレーザ溶接機の大出力化です。これにより、TIG溶接/アーク溶接作業者でも同等出力の溶接が可能になりました。

TIG300A機=ファイバーレーザ1500W機」と捉えてもらうと分かりやすいかと思います。

また、価格差が激しい要因として、中国製と国内製の違いがあります。中国製は安価に入手することが可能な一方で、日本製は高価ですが溶接機の品質やサポート体制に定評があります。

最近では、高出力機が安価になったとはいえ、TIG溶接機と比較するとまだまだ高価な製品になります。

中国製の弱点は基本、日本国内に修理部品含め在庫は無く、本国に返品したうえでの修理対応となってしまうところです。一方、日本製はサポート体制が安心です。

ノースヒルズ
WEL-KEN
アマダ
エイム
レーザックス

最もコストパフォーマンスに優れているのは、ノースヒルズになります。筐体やコアは中国製で、コントローラやトーチは国内製、保守は日本人スタッフが対応します。サポート拠点は、東京と大阪にあります。元々はOEM供給メーカーであるがゆえに認知度は低いですが、10年前から製品が国内市場に供給されており、毎年リビジョンアップしています。時代の変化に合わせて新製品を開発し、国内市場に提供しています。

WEL-KENは、すべて国内製で安心できる製品です。古のハンド式YAGレーザ溶接機メーカーでトーチ周辺のこだわりが特に良いです。導入コストは、国内製であるがゆえに少し高めな設定になります。サポート拠点は東京にありますが、代理店網が敷かれており、レーザ溶接機購入を相談するとよく提案されるメーカーになります。

アマダは、以前までは子会社のアマダウエルドテックが製造し国内製でしたが、新型ハンド式ファイバーレーザ溶接機は、中国製になります。保守は日本人スタッフがすべて対応しており、全国のサポート拠点での対応が可能です。

エイムは、溶接の製造現場の課題解決から開発されたメーカーになります。すべて国内製で保守も日本人スタッフが対応しています。

レーザックスは、レーザ受託加工の延長線から生まれた溶接機で、すべて国内製かつ保守も日本人スタッフが対応しております。販売開始から新機種が登場しておらず、その登場が待たれています。

※一部で、小型空冷式のファイバーレーザ溶接機の流通があり、小スペース低コストでの販売がなされています。しかし、「周辺環境の整備に要注意」や「レーザ寿命が短命」などが懸念されるため、ランキング外としています。

加工技術の汎用性

従来のファイバーレーザ溶接機は、照射径が細過ぎるため、手での溶接作業には使えないと言われておりました。それを手でも溶接できるユニットを各社開発がなされたことで、一気に市場が広がり今日に至ります。一つ大きな違いは、スイング機能ワブリング機能に分かれることです。

スイング機能は、溶接の進行方向が縦だとしたら横にレーザが動きます。スイング幅は、各社・各製品で異なるため個別に確認が必要です。

ワブリング機能は、1φ程度の円弧にレーザが動きます。スイング機能と違って調整できませんが、TIG溶接工が扱うのであれば、少しのズレの補正は1φで十分に対応可能です。

ワークの厚みや種類によって、出力とレーザ種類を適切なモノを選定して頂く必要があり、出力は500W/1000W/1500W帯が主流になります。数年前までは、最上位機種でも、300W程度しかありませんでしたので、大きな飛躍を遂げています。飛躍の原因となったのは、電気自動車(EV)の生産量増大によるものです。EV用バッテリーの生産工程で必ずファイバーレーザ溶接機は必須であるため、低コストハイパワー化が一気に進みました。

また、レーザの種類もマルチモードからシングルモードへと変貌を遂げました。

マルチは、小型のレーザ発振器を複数並列化することで大容量パワーを出す仕組みです。シングルモードは、大型のレーザ発振器1台で大容量パワーを出す仕組みです。

光吸収が良い素材は、マルチモードとシングルモードの差は大差ありません。しかしマルチモードは、照射径が太くなりがちで、光吸収が悪い素材(アルミ/銅)は、ポーラス状のものが表面に浮かび上がったり、溶け込み不良に陥ったりします。また、マルチとシングルを併記している溶接機は、省力パワーでシングル、ハイパワーでマルチに切り替わる構造となっています。

ノースヒルズ
WEL-KEN
レーザックス
アマダ
エイム

ノースヒルズは、スイング機能(0~4mm)、シングルモード、最大1500W。幅広い素材と厚みに対応可能。良い機能をすべて盛り込んだスペックになっており、スイング調整機能が素晴らしいところも高評価としました。

WEL-KENは、ワブリング機能(1φ)、シングルモード、最大1000W。幅広い素材に対応可能。現在1000W機が最大である。他社と同等の厚みも対応できるように1500機の登場が待たれています。2mm程度の板金溶接には、簡易に溶接できる点は大きな利点と言えるでしょう。

レーザックスは、ワブリング機能(1φ)、パルスモード、瞬間最大4500W。ファイバーレーザ溶接機にも関わらず、パルスモードを押しているのがレーザックスです。瞬間的なレーザとしては、全メーカーの中で最大ピークパワーを誇り、ワブリング機能を使用することによって、光吸収性が良い素材に対しては良好な溶接性があります。また、ステンレス系の溶接が得意な『FH-300』『FH-450』の二機種に加え、アルミ溶接が可能な『FH-500+』をラインナップしています。『FH-300』『FH-450』は、パルス発振によって母材を溶け込ますのに対し、『FH-500+』は、直流でレーザをワブリングさせることにより母材を溶かし込む仕組みとなっています。注意点として、『FH-300』=3000W(パルス)、『FH-450』=4500W(パルス)、『FH-500』=500W(直流)と、型番/W数が連動していないところです。またトーチも、各機種によって異なります。

アマダは、スイング機能、モード非公表、最大1500W。グループ会社のアマダウエルドテックのノウハウとは別ラインで製造された製品です。1500W一択で勝負を掛けており、板金加工業者向けの製品としては完成形ともいえます。超薄物/厚物/反射率が高い素材には、適していないため確認の必要があります。

エイムは、ワイド機能(センター/リング)、シングルモード、最大1500W。金属加工を得意とした会社が製造した溶接機で、太いビードの溶接が可能。治具を使ってのパイプの溶接を得意としている一方で、パワーの逃がし方に課題があり、フルパワーでの長時間照射には不向きです。出力により機種が細かく分かれており、標準タイプは四機種あります。それぞれ、600W/800W/1000W/1500Wとなっています。特殊機種として『AFL-4000R』という型番があり、こちらは最大1500Wのレーザ+周囲に2500Wのレーザをドーナツ状に照射することができるハイパワータイプとなっています。また、新たにコンパクト型の1500W(空冷)の安価版も取り扱うことになり、こちらはチラーを取り除くことにより筐体が小型化している一方で、空冷のため照射時間に制限がつきます。

使いやすさ

【判断基準のポイント】

  • アーク系のTIG溶接や半自動溶接と比較し、溶接する上での操作性を基準とする
  • 溶接工が作業する上で、誰でも分かりやすく操作可能か
  • 快適な作業性が得られているかどうか
WEL-KEN
ノースヒルズ
エイム
レーザックス
アマダ

WEL-KENは、ハンドのYAGレーザ溶接機では最古の老舗メーカーであり、顧客の操作性には定評があります。特にトーチ部分にこだわりを持っており、他社と一線を画す機能(ワブリングヘッド)が備わっています。

このワブリングヘッドは、φ1mmの照射径を持っており、0.1mm程度の隙間を埋めることが可能です。また、トーチ自体は小型かつ軽量で、配管の内径から小さな容器の内径まで簡単に溶接することができます。

あとは、薄物の鉄とステンレスの板金加工業者にユーザーを絞っていることも他社とは異なります。一方、特殊材/中厚/曲線は、スペックやトーチ的な問題で苦手としています。

ノースヒルズは、TIG溶接の職人目線でコントローラーの開発設計がされており、ボリューム式とアナログ部分を残しながら、最新の操作機能を搭載していることに特長があります。実際、購入ユーザーの声からも、「TIG溶接工が違和感なく操作できる」を重きに、数多くの点において溶接機設計されています。

トーチの見た目は少し無骨ですが、ワークに直接当てて溶接するため、「握りやすく重量がある方が安定する」といった声もありました。先端のコレットには、黒鉛が使用されており、アルミや銅と言った柔らかい素材に対しても、擦り傷を付けずに溶接することが可能です。

エイムは、TIG溶接の受諾加工メーカーなので、こちらも溶接工の目線で開発設計された溶接機です。溶接機は、目新しいデザインや新機能につい目が行ってしまいがちですが、使いやすさこそが、安定した製品を効率よく生産することに繋がります。

トーチは完全なペンシル型になっており、お箸を持つような感覚で握るタイプで、これは旧来のハンド式YAGレーザの系統を意識したものです。

レーザックスは、レーザ受託加工メーカーの強みを生かし、独自のレーザ加工システムなどを開発。作業者でありながら開発者でもあるが故の操作性は、利便性が高く、ディスプレイの配置やトーチの置き場所といった日常の使いやすさにまで、きちんと目が行き届いています。

トーチは機種により2タイプから選ぶことができ、省スペース型のペン型と、高出力にも耐えうるL型トーチになります。ペン型に関しては、トーチをねじったりする作業でも、回転機構により持ちやすさが大幅に改善されています。周辺オプションも含め、作業者に寄り添った機能が複数ある点が魅力です。

アマダは、コントローラをすべてタブレット端末に集約することにより、今まであった製造業の概念に革新をもたらしました。実験室などのクリーン環境下では、細かい作業変更が簡単にできることが評価ポイントです。ただし、鉄工所などの悪環境においては、鉄粉や電磁波らの影響によって、通信障害やタブレットの故障が発生しうる恐れがあります。

これらの自体を防ぐために、アマダからは、専用レーザルームを構築することを強く薦められます。その分だけコストがかかりますが、個室を作れば、安全安心を軸に置いた作業が可能になります。

サポート体制

【保守サポートの重要性】

近年、ハンドレーザ溶接機を取り扱う販売店は日に日に増えてきていますが、そのほとんどが社内にレーザ技術者が不在の会社です。ハンド式は、保守が必要な部分が少ないとはいえ、他の加工設備同様、中長期で使用するためには身近に保守点検可能な技術者がいることが重要です。

現在、ハンドレーザ溶接機の技術革新が急ピッチで進んでいるがゆえ、至る所でサポート不完全の販売展開が実施されているという問題が発生しています。

例えば、レーザには安価な保護ガラス以外に高級なガラスが複数連続している部分があったりと、複数の保守部品が存在します。内部の高級ガラスは通常使用では破損しませんが、扱いが悪いとダメージを受け交換になります。

そして国内で保守が不可な場合は、海外に送付しての対応となってしまい、その金額もかかる時間も膨大になることが予想されます。これらは、購入段階では特に見えづらい部分(売って終わりの販売店はきちんと説明しない)なので、注意しなければなりません。

当協会では、こういった理由から、国内で保守点検可能なサポート体制のある会社を重要視しています。

【判断基準のポイント】

  • 全国の顧客に対して対応することが可能か
  • 即座にサポートできる体制や人員が整っているか
  • メンテナンス対応や中長期でのサポートが可能か
アマダ
WEL-KEN
ノースヒルズ
レーザックス
エイム

アマダは、板金設備業界における全国トップシェアを保有しており、各地域ごとにサポート部門があります。サポート力は、他のレーザ切断機等の設備と同様、既に広く認知されている通りの対応で安心できます。WEBサイトには、アフターサービス専用の窓口が設置されており、修理・校正の依頼書も整っています。

WEL-KEN、レーザ溶接機の老舗メーカーの一端を担っており、中長期でのサポートに関して、既に十分な実績があります。少人数のメーカーではありますが、そのほとんどがレーザの技術者という体制なため、レーザ溶接に対する知見もノウハウも安心感があります。

ノースヒルズは、東京と大阪の2拠点にサポート体制を整えています。上記アマダを除けば、2拠点以上での保守サポートを展開している唯一のメーカーになります。特に関西より西で言えば、メーカーとしてはここだけなので、そういったエリアのユーザーには追加の安心材料と言えるでしょう。

レーザックスは、レーザ加工技術を主として事業展開を行っているため、購入後の加工サポートについて良い提案を頂けることに間違いありません。レーザのジョブショップとして培ってきた加工技術力をハンドレーザ溶接機にも転用しており、内部の構造を熟知している技術者を社内に完備しています。

エイムは、東京拠点ながら、たくさん加工技術者が在籍しており、フレキシブルな対応を期待できます。ただしレーザ技術者に関しては、特定の技能者のみであることが推測されます。とはいえ社内で全て対応できる点では、上記他社に共通する安心材料です。

総合評価

現在、ハンド式ファイバーレーザ溶接機は、TIG溶接市場に旋風を巻き起こしています。今後10年で、TIG溶接機よりもハンド式ファイバーレーザ溶接機を保有している企業が増えることは間違いありません。

時代は、電気から光へ変わろうとしているのです。

ハンドレーザ溶接機は、TIG溶接機と比較すると決して安い買い物ではありません。そのうえ、今まさに市場が伸びている段階にあり、各社でさまざまな施策が次々に出てきている状況なので、どのメーカーのものにすればいいのか選ぶのは大変難しいといえます。

なので、機能性や購入価格だけでなく、使い勝手やサポート体制など、総合的によく確認したうえで、自社にマッチしたものをお探し下さい!!

S+WEL-KEN
S-ノースヒルズ
A+アマダ
A-レーザックス
B+エイム

WEL-KENは、YAGが全盛の時代からイチ早く、ハンド式レーザ溶接機を先駆けている企業であり、技術力&安定性は折り紙付きです。価格は高価ですが、それなりのあらゆるサポートが保証されることに価値があります。

ノースヒルズは、知名度こそ浅いですが、UW JAPAN社と事業開発提携を結んでおり、そのUW社のレーザ発振器は、中国のEV用バッテリー生産ラインのシェア80%を保有しているほど海外で波及しています。その発振器を使用して、日本国内専用機としてハンド式ファイバーレーザ溶接機を販売しているため、技術力は既に証明されており、その開発とコントローラーやトーチ部分は日本国内製と押さえるべきところはしっかりと押さえています。拠点も東京・大阪の2拠点あるため、購入後も顧客の細かなニーズに答えられる体制も高評価です。

アダマは、その知名度もさることながら、幅広い製品を全国で販売及びサポートしています。ただし、製品はショールームに見に行く必要があり、他の工作機械と同じように若干の待ち日数が発生してしまう可能性はあります。しかし当然、サポート体制自体は一流であり、安心して購入することができます。

レーザックスは、加工や研究をメインとされており、その培った技術は、大手自動車メーカーなども深くうなずくほど。ただし、機能自体が旧来のパルス式であるなど、ワークの制約が若干発生してしまうことは否めません。技術力や加工ノウハウは、お墨付きであるため、その欠点部分が許容値であれば、ズバリこれと言えるメーカーでしょう。

エイムは、自社の加工技術向上の延長線上で、ファイバーレーザ溶接機を設計製造した会社であるため、少々筐体が大きかったり、使い過ぎるとトーチ部分が熱くなったりと、オーダーメイド感が否め部分があります。しかし製品自体は、TIG溶接工と同じような価値観をもった技術者が製造しただけあって、ビード幅や溶け込みといった熟練工の目に叶う性能は期待できます。