近年、ハンド式のファイバーレーザ溶接機が話題になる中で、注意しなければならない問題があります。

それが、安価版中国製品の存在です。ハンドレーザ溶接機が国内でじわじわ認知され始めたことにより、本来の価格帯と比べてはるかに安い製品が現在、市場にたくさん出回っています。

日本の溶接事情にさほど詳しくない商社や代理店が、「ハンド ✕ ファイバーレーザ ✕ 溶接機」というフレーズだけで、この機械についてまだあまり知らないユーザー

この安価版中国製品を「値段の安さ」だけで営業・販売している傾向にあり、当協会として大変危惧しております。

もちろん全部がダメというわけでなく、この安価版レーザが向いている人がいるのも確かです。

ここでは、協会として「正しく理解してから購入することの大切さ」を伝えるために、安価版中国製品について詳しく解説していきます。

価格帯で大きく2種類に分別される

ファイバーハンドレーザ溶接機は、価格帯で大きく2種類に分かれます。

【※最大出力1500W製品のケース】

比較内容安価版中国製通常版
価格帯500~900万円代1,000~1,500万円
技術力△または✕◎または○
部品の品質△または✕◎または○
供給網
サポート体制◎または○
ブランド価値

技術力の差

安価版中国製品は、日本仕様として再設計されたものでは無いため、国内メーカー製品に比べて技術力が低く、精度や品質が劣ります。

通常版は、高い技術力を有しており、高精度で高品質な製品を生産することができます。

部品の品質と供給網

ファイバーハンドレーザ溶接機は、高精度な部品が必要であり、その部品の品質によって、製品の性能自体に大きく影響します。

安価版は、価格の安い部品が使用されており、供給網も中長期的な視点で整備されておりません。

通常版は、高品質な部品を使用しており、供給網もきちんと整備されています。

サポート体制とブランド価値

安価版は、そもそものブランド力がなく、信頼性やサポート体制に不安しかありません。

通常版である国内メーカーの製品は、高いブランド価値を持っています。精度・品質ともに信頼性が高く、メンテナンスや修理といったサポート体制にも安心できます。

同じ中国製でも・・・

ファイバーハンドレーザ溶接機は、日本製に比べて中国製のほうが価格帯が低く、性能面でもバラツキがあるとされています。

つまり、同じ中国製品でも・・・そこそこの精度・品質を維持できる機械もあるわけです。

そして、肝心のサポート体制においても、国内で保守メンテをしてくれる体制が整った中国製品もあるにはあるので、そういった環境であれば安心して購入することができます。

ただし、保守メンテ体制のある中国ブランドの機械は限られており、対応範囲も様々なので、事前に確認が必要です。

500万未満の製品は・・・

安価版中国製ハンドレーザ溶接機の中には、1台あたり500万未満の製品もありますが、それはいわゆるプロの溶接屋からすれば “おもちゃ” に近いものなので、ここでの比較対象には挙げていません。

そういった製品の多くは、インターネットで購入して届くものであり、営業人件費やサポート保証分を丸々カットされたことによる激安価格となっています。

「安かろう悪かろう」という “ことわざ” 通り、1台あたり500万円を下回る製品に関しては、製造業を本格的に営む方を対象した機械ではありませんので、十分にお気を付けください。

対象となるのは、ジュエリーなどの溶接やDIY目的の溶接、他にも配管技能士や電気工事士が汎用性拡大目的で購入するものです。

安価な中国製ハンドレーザの要注意ポイント

それでは、安価版中国製の気を付けるべきポイントを見ていきましょう。

①性能(精度・品質)

まず通常版に関しては、国内での厳しい試験・検査をクリアしているため、スペック面の信頼性は高いとされています。

一方の安価版は、性能面で“ばらつき”があり、精度・品質ともに、十分に確認のうえ選定しなければなりません。

【スペックの誤表記・不正表記が多い!?】

特に注意してほしいのが、カタログやWEBサイトに記載されているスペック情報と、実際の製品性能に大きな違いがあるケースです。

これは、溶接にさほど詳しくない商社もしくは代理店が、輸入先である中国メーカーから受けた説明をそのまま鵜吞みにして、製品紹介資料を作成してしまっていることに起因します。

実際のところ、レーザ溶接機は内部構造を熟知した人間が確認してやっとわかるものであり、一般人からすると相対的にしか判断できません。

そのため、こういったケースの場合、購入後しばらく経ってから、トラブルが発生した時に初めて気付くことになります。

②サポート体制

日本のレーザ溶接機メーカー通常版は、国内に拠点を構えており、メンテナンスや修理といったサポート体制が充実しています。

一方、中国製メーカーの安価版は、サポート体制について十分に確認する必要があります。

よくある例として、営業マンから「安心してください!」「すぐ交換します!」といった話が出てきたりしますが、、

本来であれば、軽微な使用上の故障などは、他の加工機同様、顧客工場で対応するが一般的です。

つまり、“顧客工場での対応ができない” 製品は、サポート体制に不安のある会社だと判断してください。

【倒産リスクあり!?】

現在、中国では50社以上ものファイバーレーザ溶接機メーカーが存在し、競争が激化しています。しかし、このような過剰競争の先に待っているのは、市場全体の価格が引き下げられ、十分な利益を確保できなくなっていき、倒産する会社が続出することです。

実際、数年後には5~10社くらいにまで減るだろうと見込まれており、当然、現在市場にある安価版中国製品には、その倒産リスクが付きまとうわけです。

もし保守メンテの対応が必要になっても、購入元であるメーカーが無くなってしまっては、修理や部品の調達が困難になります。もちろん販売店である日本の商社や代理店が倒産するわけではないので、その会社がきちんと対応してくれる可能性もあるでしょう。

しかし、その未来の判断は容易ではありません。それこそ、保証期間が終了した後、保守・メンテナンスに対応できる業者が見つからないケースだってあるかもしれません。

こういった不安を取り除くためにも、メーカーの選定は慎重に行いましょう。また、保証期間の終了後でも、保守・メンテナンスに対応できるか否か、事前にチェックしておくことも大切です。

③設計・構造

安価版中国製の中には、日本で使用するにあたって、設計や構造に問題があるケースが存在します。

安価版は当たり前のことですが、中国国内で使用することを想定して製造された機械であり、設計から構造まで、日本製の通常版とは異なります。

【中国国内の専門知識や技術が必要!?】

もちろん、“中国仕様” から少し “日本Ver.” に改良したうえで輸出されている製品もあるのでしょうが、「ソフト制御のトラブル」や「ハード修理時の接続の違い」といった不具合が発生したときに注意しなければなりません。

なぜなら、簡単な修理で解決できそうな不具合でも、設計・構造による違いから、中国国内の専門知識や技術が必要なケースがあるからです。そのため、修理に予想外のコストや時間がかかったり、中国へ一旦発送しなければならなかったり、最悪な場合、修理不可のリスクが伴うことになります。

この懸念を解消するためには、購入前にメーカーや製品について詳しく調べることが重要です。「信頼できる業者なのか」「サポート体制が整っているのか」「設計・構造の知識はあるのか」、多方向から確認すると良いでしょう。

また、購入後において、自社で日々のメンテナンスや点検を欠かさず行い、不具合が生じた場合は速やかな対応を心掛けてください。

購入前の確認ポイント

ファイバーハンドレーザ溶接機の選定を、コスト重視で決めるのはとても危険です。

以下のような点に留意して確認することで、自社にマッチした正しい製品を見極めることができます。

①メーカーの信頼性やブランド力の確認

大手メーカーであればあるほど、精度・品質の安定性が高い傾向があります。

また、メーカーの信頼性を調べることで、保守・メンテナンスの対応力を判断できます。

例えばですが、ハンドレーザ溶接機の取り扱いを始めてから「何年経っているメーカーなのか」調べてみるのも一つの手です。

②実機の確認

必ず購入前に、実機を見て、性能面や部品などを確認しましょう。

また、実際に機械を使用することになるスタッフに触ってもらうことが非常に大切です。それこそ、熟練の溶接工であれば、複数の製品を見て、触って、営業マンの話を聞けば、各メーカーの良し悪しが見えてくるかと思います。

あと「簡単に溶接できる」というフレーズが、ハンドレーザ溶接機全体の謳い文句となってしまっている傾向にありますが、実際は目的や条件等により、各メーカーによって、簡単に溶接できる意味合いはさまざまです。

これも、実機に触れることで、自社にマッチした製品を探すことに繋がります。

③デモンストレーションやテスト加工の確認

各メーカーが実施するデモンストレーションやテスト加工を依頼することで、ファイバーハンドレーザ溶接機の実質的なスペックを確認することができます。

これは、自社で普段製造しているモノを、ハンドレーザにて再現できるのかを確認する作業ではありません

前述の通り、「簡単に溶接できる」が業界全体に浸透しているフレーズですが、自社の今までの溶接ノウハウが一日程度でハンドレーザに奪われるものではなく

自社で普段行っている溶接加工が、ハンドレーザで試したらどうなるかという視点で、確認することが重要です。

安価な中国製ハンドレーザが向いている人

最後は、どういった人がこの安価版中国製にマッチしているのか見ていきましょう。

研究機関や大学

研究機関や大学は、研究に必要な設備を導入する必要があります。

しかし、基本的に予算は限られているものであり、高価なハンドレーザ溶接機を購入することが難しいかもしれません。

そのため、安価版中国製ハンドレーザ溶接機を導入することで、予算を抑えつつ、研究を進めることができます。

ハイレベルなDIY

基本的にハンドレーザ溶接は、高価な機械なので、DIY目的での購入は現実的ではありません。

しかし、安価版の中には、手が出せないこともない価格帯のものもあります。

導入すれば、ハイレベルなDIY溶接を実現できるでしょう。

ベンチャー企業

ベンチャー企業は、製造業を開始するにあたって多くの資金を必要とするでしょう。

そのため、高価なハンドレーザ溶接機を導入することができないことが考えられます。

しかし、安価版であれば、製品の開発や製造を行うための設備コストを削減することができます。

ただし、社内に技術者がいない場合は、リスクのある設備導入ということを念頭に置いておかなければなりません。

まとめ

安価版中国製品について詳しく見てきました。

このページをご覧になれば、

  • 安価版中国製品とは何か
  • 安価な理由
  • 要注意ポイント
  • 事前確認ポイント
  • 本製品が向いている人

をお分かりいただけたかと思います。

自社にマッチしたハンドレーザ溶接機を選定するために、ぜひ参考にして下さい。