株式会社WEL-KEN(ウェルケン)は、東京都世田谷区に本社を置く、ファイバーハンドレーザ溶接機の老舗メーカーです。
主力製品は、手軽に使える小型のハンドレーザであり、高い技術力と品質管理により、長年多くのユーザーから支持を得ています。
自動車/建設機械/医療機器など幅広い分野での利用実績があり、WEL-KENは、スタッフ全員が満足度の高い働き方を実現するために、教育に力を入れており、社員の定着率が高いことでも知られています。
新しい技術である「Vortex Technology」というものを使ってファイバーハンドレーザ溶接機を製造・販売しています。この技術は従来のレーザ溶接機にはなかったもので、画期的な溶接機として注目されています。
世田谷区にあるショールームでは、
- 『V-F2000(出力500W)』
- 『V-HF3000(出力1000W)』
の2機種を展示しており、実際に使用することで、溶接仕上がりの美しさや使いやすさなどを体験できます。
また、レーザを熟知した技術スタッフが豊富に在籍し、新製品の開発を日々継続して行っています。
ウェルケン製品の基本情報
【画像・情報引用元:公式HP】
製品ラインナップ
ぜんぶで4機種あります。標準機として最大出力300W機、500W機、1000W機が存在します。
注意すべき点は、型番と出力値が一致していないということ。300W機がV-HF1000、500W機がV-HV2000、1000W機がV-HV3000になります。これらはすべてシングルモードになります。
2023年発売の最新機種「M1500V」は、定格出力1500Wの発振器を採用。発振器の高出力化に伴う加工領域の拡大に加え、最新のウォブリング機能を併用することで、ワイドレンジな溶接加工を実現します。こちらは、マルチモードになります。
自動ワイヤー供給装置を国内で初めて導入した企業でもあります。トーチの種類もT型とペンシル型の2種類を取り揃えています。
新機種では、溶接作業者のことも考え開発し、革手袋をした状態でも操作しやすい操作パネルに導入など、定期的なVerUPを実施しています。
営業体制
東京都世田谷区あるショールームでの対応と、デモカーによる全国各地への営業活動をしています。
また、少人数ながら老舗メーカーとしての地位を確立するため、長年にわたり全国の機械工具商社との販売網を確立させています。
あなたが商社へ相談した際に、WEL-KENを先に紹介する商社は、長年WEL-KENとのパイプも在り、技術を熟知したうえでの良い提案をする商社だといえるでしょう。
サポート体制
アフターサポート専門のサービススタッフが各社に赴き、操作方法やトラブルについて対応させて頂いております。
顧客企業様にてほとんどの課題を解決できる優秀なサービススタッフが常駐していることでお客様に安心して頂けます。
ウェルケン製品の特長
① VORTEXテクノロジー搭載
これは、レーザー光の旋回させることで、従来のレーザ溶接に比べ、溶接時の熱影響範囲を広げ、溶接面の仕上がりを向上させる技術です。
従来のファイバーレーザー溶接機の弱点であった、必要以上に正確性が要求されていた作業の許容度が大きく拡大します。
隅肉溶接において、より広く、丸みを帯びた美しいR形状の溶接ビードが得られます。
② 従来のレーザ溶接の欠点を排除
従来のレーザ溶接機では、出射されるビーム径が非常に小さいため、手動での肉盛り溶接には熟練が必要でした。
しかし、Vortexテクノロジーはビーム旋回により広いエリアにレーザーを照射できるため、狙いに対する許容度が拡大します。
また、レーザービームが溶加棒に万遍無く照射され、材料を巻き込みながら溶かし込むことで、手動でTIG溶接並みのしっかりとした肉盛り溶接が比較的容易に可能となります。
Vortexテクノロジーを搭載したレーザー溶接機は、より広い範囲に照射できるため、肉盛り溶接において熟練が必要なレーザー溶接機の欠点を排除し、TIG溶接並みの肉盛り溶接が可能となります。
③女性でも使える超小型トーチ
超小型のトーチを使用しています。そのため、女性でも持ち運びや操作が容易であり、非常に使い勝手が良いと評価されています。
エアーを使用するため、クリーンなエアーを使用しない場合は、トーチの傷みが加速しますので注意が必要です。
④ 溶接スピードアップ
高い出力を持つレーザー光を使用しているため、溶接スピードが非常に早いという特徴があります。
これにより、従来のレーザ溶接機に比べて作業時間を短縮することができます。メーカー公表値として、TIG溶接機の二倍以上とのこと。
⑤本体の小型化
本体が小型であるため、本体の移動が容易であり、作業現場のスペースを取らずに使用することができます。
また、小型化により、省スペース化が可能となり、作業スペースの最適化ができます。
ウェルケン製品の注意点
①トーチの小型化による弊害
WEL-KENのトーチは、国内流通メーカーの中で最小トーチとも言われています。
その言われは、VORTEXテクノロジーがエアーの力によるレーザ旋回技術を確立させたことにあります。
最大旋回径は、φ1mmと、他社のスイング機能である0~5mmと比較すると旋回範囲が限定的であることが挙げられます。
ファイバーレーザ溶接機そのもののレーザー径はおおよそ0.1~0.3mmと言われておりそれと比較すると素晴らしい技術ではありますが、溶接板厚が上がれば上がるほど、VORTEXテクノロジーの良さが失われてしまいます。
②マルチモードとシングルモードの混在
WEL-KENのシングルモードは、300W,500W,1000Wの3機種に留まり、新機種はマルチモードに舵を切りました。マルチモードとシングルモードは、溶接ワークによって仕上りに大きな差が発生します。
マルチモードが得意とする素材は主に1~3mm程度の鉄になります。これらの特定の素材に限り、その特性がいかんなく発揮可能です。溶接で必要なものは、美観、強度、品質になります。
- 美観は、表面上の仕上りの綺麗さになります。→鏡面ステンレスやアルミ、銅など反射率が高い素材は、薄板でも表面の仕上りが著しく悪化します。
- 強度は、溶け込み深さになります。→ワイヤ供給装置付きのファイバーレーザ溶接機全般に言えますが、母材の溶け込み深さが甘くなる傾向にあります。
- 品質は、ブローホールなどの気孔欠陥が無いことになります。→鏡面ステンレスやアルミ、銅など反射率が高い素材は、表面のみならず溶接内部にも発生しやすいです。
シングルモードを選定したい企業にとって、MAXが1000Wであることに注意が必要です。
③コントローラがタブレット
加工機では進んでいるタッチパネル化が、普及しているTIG溶接でもタブレット化はまだまだ進んでおりません。2023年新発売の大手メーカー製TIG溶接機でも、アナログボリュームのみの販売になります。
これはこれから5年10年と使用する上での粉塵やヒュームなどが発生する溶接工場環境でワークを製造するにあたって手作業領域の作業現場では故障の原因になることにほかなりません。
また、アナログボリュームは革手でも瞬時に操作できるのに対し、タッチパネル式のコントローラは手袋を外しての作業が要求されます。
まとめ
WEL-KENのハンディファイバーレーザ溶接機は、4機種それぞれに独自機構をもちいており、顧客ニーズに合わせた選択が出来るようモード種、トーチの型、ワイヤー供給有無などの選択肢を複数持ち合わせている企業になります。
出力の上限を考えると0.1~2mm程度までの一般的に金属板金業にフォーカスを当てて開発した製品が多く、TIG溶接で難しかった薄物製品の溶接には群を抜いて良い製品だといえます。
業界全体では、中板や反射率が高い素材の接合を視野に製品開発がおこなわれている中、市場を絞った戦略による老舗メーカーならではの技術開発メソッドがわかります。
一方、注意すべき点は、複数の機能を選定できるがゆえに、選定者は各機能の特徴をより理解する必要があります。レーザ溶接機は大は小を兼ねません。